オンライン資格確認端末の導入・現場の苦労をわかってくれない

2022年10月22日

オンライン資格確認端末導入の現場

健康保険証の原則廃止が打ち出され、いよいよオンライン資格確認端末の義務化が待ったなしの状態になり、各施設からの導入要望が殺到しています。それでなくともお上から導入費用の指導を受け、全く利益のない中でなんとか導入期限を守るべく業務の効率化を図り、最短の時間でお納めできるように試行錯誤してきましたが、これで万事休すという通知を出してくれました。仰ることはごもっとも。ただ、現場の苦労を全くわかってくれていないなと思うばかりです。

通知の内容って何?

通知の内容は何も誤りはなく、むしろそうあるべきという内容です。ただ、現場のわがままを言わせていただければ、これで手も足も出なくなったと、期限は守れなくなったという内容です。
全文を掲載したかったのですが、それははばかられるので控えることにしました。簡単にいうと「オンライン資格確認の導入にあたって、医療機関から電子証明書やアカウントを提供させるな。使用に際しては医療機関での作業時に、医療機関職員等の立ち会いの下で使用せよ」というものです。全文はこちら

一体なにが手足を縛るのか

医療機関は大規模から小規模まで様々ありますが、いずれも診療時間中はお忙しくされており、ベンダが「オンライン資格確認端末を設置する」という作業を行うことは通常できません。したがって、昼休み、診療終了後、休診日を狙って作業をさせていただきます。この通知では、医療機関とは別のところで事前の導入準備を禁止することになり、また医療機関等職員立会いのものでなければアカウントや電子証明の使用をするなという指示です。医療機関内で導入作業を行ったとしても、実際に立ち会っていただけるケースがどれだけあるのかが疑問でしかありません。もちろん、おっしゃっていることはまさに正しいことであり、否定する内容はまったくないのですが、それでは実際にオンライン資格確認を導入する場合を想定し、ベンダがどう作業すれば極短時間の間に作業完了することができるのでしょうか。
そもそもですが、オンライン資格確認端末の導入にあたり、ベンダが実施しなければならない作業範囲は一体どこまでなのか疑問です。例えば「初期インストールとハードウェアの設置、ネットワークの接続まで」で「電子証明書のインストールやアカウントの設定、顔認証リーダへのアカウント登録は医療機関の責任で実施」と明確に指示があれば今回の通知も非常に納得感があります。ベンダがやりすぎていたということですので、それであれば補助金範囲内で機器設置、ネット接続まではやり、通知が指示する証明書やアカウントを使用する部分は医療機関の範疇で実施いただけばよいだけの話です。とはいえ一体誰が、この分かりづらいオンライン資格確認端末を動く状態にまでして医療機関に納めていたんだと、そもそもなぜこんな複雑な仕組みにしたんだと、まずはそこを改善していただくことはできないものでしょうか。USBトークンに電子証明書を記録して、これを挿せば接続可能になるとかでも良かったのでは。

そこかしこに医療機関ごとの設定を散りばめてくれるおかげで設定後の動作検証の必要があり、設定をミスすると昼休み中に作業が終了しなくなる。それを見込んだ作業スケジュールを立てなければならなくなるのです。

昼休み中に作業が完了できなくなる可能性が増えた以上、期限までに導入は完了できる目処は立ちませんし、労働環境を指導する立場の厚生労働省が「夜間や、休日の労働を強制する」というのであれば本末転倒なのではないでしょうか。

本日開催されたシステム事業者導入促進協議会において

本日(令和4年11月2日)に開催されたシステム事業者導入促進協議会、これそのものは特別新たな情報提供はなく、とにかくベンダは早く導入するよう協力を要請するということと、見積もり価格が高止まりしているので必須項目、準必須項目、そうでもない項目に分けて提示せよといった内容で、現場の感覚からは乖離のある内容でした。
その中で、唯一現場の声を代弁していただけた意見があり、まさに本記事で言いたかった内容でした。
各ベンダは、なんとか期限内での導入目標を達成すべく、社内で動作可能状態までオンライン資格確認端末をセットアップし、限られた(昼休みや診療終了後)時間内にネットワーク環境の整備から連携設定、機器の配置に至るまでを完了できるよう創意工夫してきました。それを根拠を明示せず、一方的に「不適切な事例」の一言で社内での動作可能状態までのセットアップを制限することに関してはやはり不信感を拭い去ることはできません。また別の視点としては、いずれのベンダも、同じ手法で導入を効率化することを考えていたのだなということがわかりホッとしました。
本日のYoutube配信で、オンライン資格確認端末だけの動作をもって「運用開始」とはならないことを確認できました。ONSサイトに早速掲載された内容に

■「オンライン資格確認の運用開始日」の定義
自施設を訪れた患者が、個人番号カード(マイナンバーカード)を用いて電子資格確認(オンライン資格確認)ができる環境が整った後の最初の診療日。

との記載がありましたが、Youtube配信時の「顔認証機能付きカードリーダの接続が必須である」という要件が抜けていることについては要確認と思います。(汎用のカードリーダであってもマイナンバーカードが使えればよいということ?)

いずれにしても、来年の1月期限、あるいは3月期限の補助金支給期限の延長は今のところないという回答だったので、労働基準法を無視した労働を続けなければならないことは変わりありません。導入機器さえ在庫確保すれば労働力は無制限に在庫があるとお考えのようですので。
あと、もう一つ言いたいのは診療所等における42.9万円の補助金額の算出根拠ですね。人はタダで見積もらないと指導されるってことでしょうか。きっちり指導されました。